アフリカのエチオピア出身の友人が「インジェラ(Injera)」という家庭料理を作ってくれました。
インジェラはエチオピアやアフリカ北東部で主食とされている伝統料理で、日本で言うところのお米と同じです。
このこんがりと焼き上がり、もちもちっとしているクレープのようなパイ生地を無数のおかずと一緒に食べるそうです。
生地の表面にある芸術的な無数の穴は、アイン(目)と呼ばれるもので、この穴が多いほど出来が良いとされているよう。とにかく一目見ると驚くほどの美しい穴がたくさん。どうやって作るのかは、何回聞いても結局分からなかったですが、どうやらイネ科のテフという植物の粉を水で溶いて発酵させるとできるそうです。
トウモロコシの粉で作ったりするのでグルテンフリーだそうです。
香りは見た目以上にもっと健康的。最初はビールが含まれているのかと思ったくらい、茶褐色の色とバブル穴とちょっとビターな感じの匂いが印象的です。しつこいくらい何度も聞きましたが、ビールじゃなかった。ハハ。
インジェラの生地だけ食べてみるとモチモチっとしたテクスチャー。少しだけ酸っぱさを感じましたが、発酵食品のため酸味が少しあるようでした。
日本や中国でいうところのお米と同じように、様々なおかず(ワットというそう)との組み合わせで食べるのがインジェラだそうで、豆のペーストやカレーのようなカラフルなおかずがずらりと並びます。
おまけに写真映えもするインスタグラマー好みの料理。 🙂
ほうれん草は和食の胡麻和えに似たような味で、キャベツの和え物はお漬物のような味わい!親しみを感じます。
そして赤や茶色のカレーのようなものは、「シロ(Shiro)」と呼ばれる豆をペースト状にしたもので、唐辛子やコショウなどの辛味やスパイスが味付けられています。
辛いかなと思ってゆっくりと口に運びましたが、思いの外辛くもなく、インドカレーのような、アラブ圏のフモスのような、とても食べやすく美味しかったです。生地の酸味が辛味を打ち消しあうのかなあ?
個人的には濃さが中間の色をしているペーストがとても美味しかったです。豆料理バンザイ。お腹にも優しいし味も美味しく、やっぱり豆が大好きなのであります。
ほうれん草の隣にはムートンのお肉料理もあり、こちらもとても美味しかった。
またエチオピア人はこれを右手だけを使って食べます。インジェラのパイをちぎって見事にペーストを絡めていく友達の手さばきがとても美しかった。
私は一回のつかみで多くのShiroを取り込めなかったので、途中から脱落してフォークにも助けてもらいながら食べました。
エチオピア人は本来なら何枚も食べるそうですが、私は1枚半で完食。それでも満足です。
このインジェラはエチオピア人の生活の一部のようですが、知らない人もたくさんいるでしょう。
アフリカ文化を知らないヨーロッパ人の学校の先生が、そのエチオピア人の友達の親戚の子供に、「毎日何を食べているの?」と聞いてきたことがあったそうです。その子供が、毎日のように「インジェラ」と答えていたら、先生は「毎日同じものばかりで栄養が偏っているわ」と心配になり、その子の親に「毎日同じものばかり食べさせないでください」といったそうです。友人がそんなストーリーを語ってくれました。
エチオピアの人からすると、「インジェラ」を食べているとは言っても、毎回具材は異なるため、同じものというわけではないのですね。日本の子が「毎日ご飯食べてる」と言ってもおかずは異なりますよね。
もう一つ、前菜として出されたおもてなし料理が、このカリフラワーとタヒーナイルのひよこ豆ペースト。
このタヒーナと言うのがゴマのペーストで、とっても優しい味をしています。フモスをクリーミーにマイルドにした味。そこにパセリが散りばめられて、とても香りある美味しい前菜でした。
そして食後はエチオピアンコーヒー。エチオピアといえばコーヒー。コーヒーといえばエチオピア。有名ですね。
毎日何倍ものコーヒーを飲むエチオピアの人にとっては、コーヒーの淹れ方も大事なプロセス。
お香を焚き、コーヒー豆をフライパンで炒ったりして十分香りを楽しみながら、セラミックでできた美しい壷のコーヒーメーカーでコトコトじっくりと淹れて、湯飲みのような小さな可愛らしいコーピーカップに注ぎ入れるまでが大事な儀式のようです。
日本の茶道のようなものかなあ。ゲストの眼の前でわざわざ手間と時間をかけてコーヒーを淹れてくれるのは本当に心温まり嬉しかったです。
そして丁寧に作られたコーヒーはとても濃く飲みごたえのある味わい。ギリシャコーヒーのように砂糖をたっぷり入れて飲むようです。
炊いていたお香はお寺のような香りがしましたが、とても落ち着くアロマでした。アロマのおもてなしはぜひ真似したいものです。
このインジェラは、調べてみると、長い長い歴史があるようで、紀元前100年前には存在していたようです。
ヘルシーで簡単に食べられて多くの栄養を摂れるので、長い時間を経ても人々に親しみをもたれて選ばれてきた料理なんだなあと思うと感慨深いですね。
時間と労力をかけておもてなしをしてくれたホスピタリティは、こんな時代だからこそまた心温まり、人と人とのつながりの大切さを感じさせてくれました。
たくさん笑ってたくさん食べて、とてもハッピーになれた午後です。
また一つ、アフリカとのつながりができたことを嬉しく思います。
#ふわっとエッセイ #エチオピア