ESSAY

一緒に失敗を楽しめる仲間 *エッセイ*

日本文化がわからないことへの緊張感や焦りというのは前回のブログにも書いた。一人でいる時にそのような状況になると手に汗を握ることになるけれど、同じような問題を抱えた友達といると、なかなか楽しいものでもある。

先日、一時ヨーロッパから帰国した友人と東京駅のラーメン屋に行った。

彼女はハーフのため、日本語は話せるし漢字も書けるけれど、一度も日本に住んだことがない。東京駅には、ラーメンストリートと呼ばれる長い通りに右も左もラーメン店が所狭しと並んでいた。

食欲をそそる香りにとにかく思わず即決しそうになる気持ちを抑え、せっかく日本にいるのだから人気店で美味しいラーメンを食べようということになり、あえて混んでいるお店を選ぶことにした。

長い列に沿って多くの人が並んでいて、入り口の近くにはどうやら食券を買う自動販売機があるようだった。皆そこで自分の食べたいものの食券を買い、中でその食券をお店の人に渡して席につき、ラーメンの到着を水を飲みながら待つという、ありふれたシステムだった。

そんなことでさえ帰国子女にはなかなか新鮮な仕組みである。私たち二人は列に並ぶ前にどうやって注文するのかをまず理解しようとキョロキョロと中や周りを見回した。

ふと、列にロープが張ってあり、手前にはなんだか注意事項が記載された手書きの張り紙のようなついたてがあった。それを見つけた友人がえっとと言って読み上げた。

「食券を買って、上にお並びください、だって。二階があるのかな」と言う。

ふむ、ラーメンストリートはこの大通りのことで、二階があるようには見えない。

長蛇の列で先端は見えないが、明らかに目の前に店があるような状況だ。なんとなく二階に行く階段を探す気になれなかった。

なので、「そうなの?」と言ってその張り紙に近づいて、私も一応読んでみた。友達も一緒にもう一度まじまじと覗き込んでいる。

そこには、

「食券をお買い求めの上お並びください」

と書いてあった。

・・・(・_・;

私は、

「う、上・・って二階?じゃないよね?」

と小さな低い声で彼女の顔を見て言った。

すると、

「私に聞かないで」

と友人は言う。自信がないという。

・・・(-_-)

私には自信があった。二階の上じゃないでしょー!?upperじゃない。これはさすがにわかる、えっへん。

私はリーダーシップを取る気分で、友達に

「ここで大丈夫だよ」

と言い、結局10分くらい並んだ後食券を買い、無事美味しいラーメンを堪能することができた。

結局、上じゃなかったよね。あの張り紙の「上」は、「さらに」の意味だからね、と言って笑いあった。

後々その話を日本人の友人にすると、

「そ、そんなことに苦労しているんだね。。」

とケラケラと笑われてしまった。

いや、結構レベルは高いと思うんだけど、少々変わったところでつまづくのよね、と強気に訂正しておいた。無駄な抵抗ではあるけれど。

そういうちょっとゆるいやりとりを一緒に楽しめる仲間がいるというのも、これまた楽しいものだなと思う。

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