ESSAY

例え話が上手な例えにならない件*エッセイ*

帰国子女として日本の文化に疎いと、なかなか会話の中に溶け込めなかったり、社会の暗黙のルールがわからなかったりして周りと歩調が合っていないなんてことは日常判事。困ることも辛いことも多々あるが、むしろそんな右も左もわからない状況から毎回学んでいく新鮮さを楽しんでいるところもあったりする。

ただ、純粋に何もわからないまま相手から訝しがられて「なんだかモノを知らない人」と言う立場で単に教えてもらうだけならいいのだが、こちらが違和感のない会話で相手だけがものすごくこちらの発言に違和感を覚えてしまっているらしい状況になる時がある。少なくともそんな気がすることがよくある。

そんな時は、その場の変な空気に耐え続けることもしかり、何がどう変だったのかの感覚をつかむまでに分析する時間がかかり、またちょっとした孤独感を感じる。

先日も友人と久々に都内のイタリアンレストランに行った。

店内は欧州風のオシャレなインテリアで、複数の丸テーブルが高天井の広々とした店内にゆったりと配置され、プライベートスペースが守られている。注文した料理によってはシェフがテーブルの前まで出てきて目の前で焼いてくれたりする、ちょいオシャレな空間だった。その日の食事のメニューも、クリスマス前とあり、豪華な前菜、主菜、デザート等と4−5コース選べる内容であった。

素敵なスーツを着たウェイターの男性が私達の座っているテーブルに近づいてきて、料理の説明を始めた。何だかかしこまった雰囲気で自然と背筋が伸びる。こちらとしてもドジな受け答えをしないように真剣に聞き入る。

「本日のお肉は、北海道産の鹿肉でございます」と言った。

友人は、

「へえ、鹿肉なんて食べたことがないなあ。どんなだろう」と興味津々に言った。

私も鹿肉は食べたことがなかったので、うんうんと友人に同調し、さらに説明を促すようにウェイターさんの方を見上げた。ウェイターさんは丁寧に鹿肉について説明してくれた。

「赤身が多く、多少クセがあるという方もいらっしゃいますが、脂肪分も少なくしっかりした肉感があり・・」

と、食欲をそそる描写が続き、話を聞いていると、だんだんと昔ノルウェーで食べたトナカイの肉の記憶が頭の中に自然と浮かんできた。

そこで、ウェイターさんの説明が一通り説明を終えたところで思い切って

「あ、あの、それってトナカイのお肉と似たような味でしょうか?」

と聞いてみた。

・・・。

一瞬変な空気が流れる。

・・・。

するとウェイターさんが、

「えートナカイ・・・残念ながら私トナカイのお肉は食べたことがございませんので、何とも申し上げられないのですが・・・」と言った。

そっか、と思ったが、友人も私の方を怪訝に見て

「トナカイの肉とかいきなり言われたって誰もわかんないわよ」

とピシャッと追い打ちをかけるように口を挟んだ。

ウェイターさんに迷惑かけないように、と思ったのだろう。ウェイターさんも少し申し訳なさそうにしている。

まだ続いている変な空気。

そして思う。

ああ、すみません・・・(泣)

だって描写が似てて頭の中に勝手に浮かんできちゃったんだもん(涙涙)

昔ノルウェーでトナカイを結構食べたのです。でも、もうみんな忘れてクダサイ・・。今のなし!

結局その鹿肉を頂くことになった。

実際食べてみて、やっぱりトナカイのお肉に似ているなあと心の中で思っていたが、「へえ、こんな味なんだね」と言う感想で留めておいた。でも、トナカイってシカ科だし、似ていて当たり前かとも思う。

別に口に出して聞かなくてもよかったかなあ。

そんなこんなで、毎回自分の発言とその後に続く変な空気に申し訳なくなってしまう自分がいる。

余談ですが、トナカイを食べてしまうとサンタさんの乗り物がなくなって、サンタさんが来てくれなくなりますよ〜と言う冗談もあるので、毎回よく考えてから食べるようにしてます!

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