ESSAY

沢山の国に住んだ後の悩み *エッセイ*

先日外国の友達と電話で長話しをする機会があった。

その友人も私と同じように複数の国に住んだことがあり、複数の言語を話す。理系なのもあり(?)、あまりどこかの国に強い思い入れもないし、多少の好き嫌いはあっても、どこかの国に傾倒することがない。

だからその分野に関して話していて心地よい、とも言えてしまう。

多くの国に住むと、色んなことが身近に感じすぎる反面、色んなことが客観的に見えてくるようになる。その国に関わったはずなのに、主観的になりきれないことがある。どこにいてもよそ者、という言い方をする人もいると思う。

どこかの国に強い思い入れを持たなくなることが、たくさんの国に住んだご褒美なのだろか・・?というのが最近の私の頭をかすめるテーマ。

留学や国際結婚を機に初めて海外に飛び出し、その国に馴染もうと必死になって言葉や文化を学び、海外での新しい出会いに目を輝かせ、見るもの全てが刺激になって「この国ではこうなのよ」と自慢げに話している友人が、キラキラして見える。

自分にとって一つの国や文化のやり方だけを信じて、それについて熱弁するということはもうできないんじゃないか、と残念に思うことがよくある。

別の国に移動するということは、もはやその国行きの飛行機のチケットを買ってその飛行機にちゃんと乗ること、現地で住居を整えて事務手続きを無事完了することくらいにしか思えなくなっているのかもしれない。

どうしたんだろうか自分、年齢的な問題かな?(涙)と、

やりきれない思いを抱えていた矢先であった。

その友人が、電話で言っていた事に深く共感してしまった。

「多くの国の人を理解したい、多くの国の人と自然にコミュニケーションが取れるようになりたい、お互い心地よいレベルになれるように相手の国や文化を理解したいと思いながら、複数の国に住んで、相手国や文化を理解するように努めてきた結果、自分はたくさんの国の人を理解することができるようになった。少なくとも自分はそうなれたんだと思えたけれど、多くの国に住んで混ざり合った文化的背景を持つ自分を理解してくれる人は逆にいないことに気づいたんだ。皆、どこかの文化に属してそこの基準でものを考える。当然考え方や物の見方、何かに対する視点や論点も国によって違うし、質問してくる内容も、コメントも全く異なる。そんな相手の考え方の『癖』ばかり気になって自分は誰とも会話が長くは続かなくなってしまった」

気づけば「うん、うん、わかる」と入り込んで聞いている私。

自分にも、そんなもどかしい思いがある。

アジアに行けばヨーロッパを知っている自分を理解してくれる人は少ない。

ヨーロッパに行けば、アジアを知っている自分を理解してもらえない。

日本に行っても、海外にいる日本人と話しても、当然自分と似たような経験をしている人は少ない。

毎回毎回、「あっちの国ではね、」という説明から入り、なんとなく「へえ」「ふうん」という腑に落ちてないような、興味があるんだかないんだかわからない相手の反応にとことん申し訳なさを感じながら、相手の知っている範囲で話を完結させてしまおうとしてしまうことが多々あった。

でもきっと、自分もそんな気持ちに相手をさせていることもあるかもしれない。住んだことも行ったこともない、もしかしたら地図でも指差す場所を迷ってしまうアフリカの国の出身の友人に聞いてみたら、きっと私は相手の国に興味も薄い冷たい人間だって思われているかもしれない。

理解してもらいたい、

というのが正直な自分を含めた多くの人の想いだとして、

でも、それが難しいのであれば(現実的にはきっと難しい・・)、

どっちがすごいとか、偉いとか、どっちがどうというのではなく、単純に「別の見方をする人たちがいるよ。別の風習の国があるよ」っていうのを知ってくれるだけでありがたく感じる。そしてそれを「何それ。そんなの変よ」って笑いに付さないでくれたらありがたい。

「それどういうこと?」って聞いてもらえたら多分気持ち的に救われる。

自分にとっては、純粋に『興味を持ってもらえる』、ということが嬉しい。

多分、『興味を持つ』ということが、単に情報のやり取りやうわべだけのあいづちよりも一番パワフルで心に響く、国際化の大事な一歩なのかもしれないなと思ったのであります。

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